
地震は、自宅でくつろいでいるときだけでなく、就寝中、通勤中、買い物中、運転中にも起こります。緊急地震速報を見聞きしてから強い揺れが来るまでは、数秒から数十秒程度しかないことがあり、震源に近い場所では速報が間に合わない場合もあります。
最初にすることは、非常持ち出し袋やスマートフォンを取りに走ることではありません。落下物、倒れそうな家具、窓ガラスなどから離れ、頭と首を守り、その場所で可能な身の安全確保を優先します。
安全な行動は、リビング、寝室、屋外、電車、車など、いる場所によって変わります。この記事では、地震発生の直前から揺れが収まった直後までを、場所別に整理します。停電・断水後の生活は第2部、家具固定や備蓄は第3部で詳しく確認できます。
緊急地震速報が鳴ったら最初にすること
速報から強い揺れまで時間が短いことがある
緊急地震速報は、地震の発生後に観測データを解析して発表されます。発表から強い揺れの到達までは数秒から数十秒程度のことがあり、長い準備時間が得られる情報ではありません。
通知画面を読み続けたり、家族全員を別の部屋へ集めたりするより、まず今いる場所で安全を確保します。周囲へ短く「地震、頭を守って」と声をかける程度にし、むやみに移動しません。
荷物を取りに行かず身の安全を確保する
防災バッグが別室にあっても、揺れが始まる前後に取りに行くのは危険です。家具や家電が動き、廊下に物が落ちる可能性があります。バッグは揺れが収まり、経路を確認してから必要に応じて持ち出します。
速報が間に合わず、先に揺れを感じる場合もある
震源に近い場所では、速報より先に揺れを感じる場合があります。通知が来ていないことを安全の根拠にせず、揺れを感じたら周囲に応じて身を守ります。速報には予測誤差や限界があるため、普段から場所別の行動を考えておくことが重要です。
揺れている最中に守るべき3つの基本
- 姿勢を低くする
- 頭と首を守る
- 揺れが収まるまで無理に移動しない
丈夫な机が近くにあり、机の下が落下物から身を守れる場所なら利用します。ただし、すべての場所で机の下が最適とは限りません。机が動く、ガラスの近くにある、周囲に背の高い家具がある場合は、より安全な空間を選びます。
かばん、クッション、枕などが手元にあれば、頭と首を守る補助にできます。取りに行くために危険な場所へ移動してはいけません。転倒しないよう低い姿勢を取り、窓、棚、照明、落下しそうな物から距離を取ります。
家の中で地震が起きた場合
リビング
窓ガラス、テレビ、背の高い家具、吊り下げ照明から離れます。丈夫な机の下や、物が落ちたり倒れたりしにくい安全な空間で頭を守ります。子どもを呼び寄せるために危険物の間を走らず、互いに声をかけます。
寝室・就寝中
枕や布団で頭を守り、急に裸足で歩き回らないようにします。暗闇では割れたガラスや落下物が見えません。揺れが収まってから、枕元のライトと履物を使い、足元を確認します。
キッチン
揺れている最中に、こんろへ無理に近づいて火を消そうとしないでください。熱湯、包丁、食器、冷蔵庫などから離れ、まず身を守ります。揺れが収まり、安全に近づける状態であれば、火元やガス機器を確認します。異臭がある場合は火や電気スイッチを使いません。
浴室・トイレ
浴室では鏡やガラス、落下物に注意し、姿勢を低くします。トイレでは急いで廊下へ飛び出さず、揺れが収まってからドアや周囲の状態を確認します。閉じ込めの危険がある建物では、管理者の防災計画も平時に確認しておきます。
玄関・階段
階段は転落しやすいため、揺れている間に移動しないことが基本です。手すりを持てる場所で姿勢を低くし、頭を守ります。玄関ドアの確保は、揺れが収まり、落下物や火災などを確認して安全にできる場合に行います。
高層マンション
高層階では、長周期地震動によって大きく長く揺れ、家具が移動することがあります。無理に廊下や階段へ移動せず、固定されていない家具や窓から離れます。揺れの後は館内放送、管理者、消防の案内を確認し、一般用エレベーターを自己判断で避難に使いません。
外出先で地震が起きた場合
道路・住宅街
ブロック塀、自動販売機、看板、窓ガラス、瓦などから離れます。道路へ飛び出さず、車や自転車にも注意します。丈夫な建物へ入る判断は、建物の状態や施設管理者の案内を確認して行います。
駅・電車内
電車内では、つり革や手すりにつかまり、荷物で頭を守ります。線路へ降りたり、非常用ドアコックを自己判断で操作したりせず、乗務員や駅員の指示を待ちます。駅では出口へ殺到せず、落下物から離れます。
商業施設・スーパー
陳列棚、照明、ガラス、積まれた商品から離れ、買い物かごや手荷物を頭の保護に使える場合があります。出口へ走ると転倒や混雑につながるため、係員の案内に従います。
エレベーター内
すべての階のボタンを押すなど、設備の案内に従って最寄りの停止階で降ります。閉じ込められた場合は、非常ボタンやインターホンで連絡し、扉をこじ開けて脱出しようとしません。設備ごとの表示や管理者の指示を優先します。
地下街
出口へ一斉に走らず、落下物から身を守り、非常放送や誘導灯を確認します。停電時は非常照明が点灯する場合がありますが、足元や段差に注意します。火災や浸水の危険がある場合は、施設管理者や消防の誘導を優先します。
海岸・川沿い
海岸付近で強い揺れ、または弱くても長くゆっくりした揺れを感じた場合は、津波警報を待たずに海岸や河口から離れ、高い場所など安全な方向へ避難します。津波を見に海岸へ戻らず、気象庁や自治体の情報と現地の標識に従います。
車を運転中に地震が起きた場合

急ハンドルや急ブレーキを避け、ハザードランプなどで周囲へ注意を促しながら、ゆるやかに速度を落とします。大きな揺れを感じたら、可能な範囲で道路の左側へ停止します。道路の損傷、信号停止、障害物に注意し、警察や道路管理者の指示を確認します。
車を置いて避難する場合は、できるだけ道路外へ移動します。やむを得ず道路上へ置く場合は左側へ寄せ、エンジンを止め、キーを付けたままにするか車内の分かりやすい場所へ置き、窓を閉めてドアをロックしないことが警察庁から案内されています。
避難者や緊急車両の妨げになる場所には駐車しません。津波避難など地域や道路状況によって対応が変わるため、現場の規制や警察官の指示を優先してください。
揺れが収まった直後に確認すること
- 自分と家族に出血、強い痛み、意識の異常などがないか
- 火や煙が出ていないか
- ガスのような異臭がないか
- 割れたガラスや落下物が足元にないか
- 家具や家電が倒れ、さらに動く危険がないか
- 安全に使える出口があるか
- 津波、土砂災害、延焼など別の危険がないか
- 気象庁、自治体、施設管理者の情報を確認できるか
- 自宅に留まるか避難するかを安全面から判断できるか
- 自分の安全を確保した上で近隣へ声をかけられるか
けが人がいても、火災、倒壊、津波などが迫る場所へ一人で入らないでください。119番、施設管理者、消防、警察へ場所と状況を伝え、安全にできる範囲の対応にとどめます。
ガス臭がある場合は、火を使わず、照明や換気扇などの電気スイッチにも触れません。漏れている場所を探さず、安全な場所へ移動してガス事業者、消防、管理者へ連絡します。
地震発生直後にやってはいけない行動
- 周囲を確認せず、あわてて屋外へ飛び出す
- 荷物を取りに危険な部屋や建物へ戻る
- 割れたガラスがある場所を裸足で歩く
- 避難のため一般用エレベーターを自己判断で使う
- ガス臭があるのに火や電気スイッチを操作する
- 発信日時や地域が違うSNS情報だけで行動する
- 津波を撮影するため海岸や川へ近づく
- 危険な建物へ一人で救助に入る
状況によっては、その場を離れる、設備を操作するなど別の対応が必要です。ここで挙げた内容を絶対的な禁止事項として機械的に扱わず、目の前の危険と、公的機関・施設管理者の指示を優先してください。
地震直後に役立つ防災用品
枕元へ置けるLEDライト
踏み抜き対策を考えた防災スリッパ
周囲へ居場所を知らせるホイッスル
家族が別々の場所で被災したときの初動
平日の昼間は、家族が自宅、学校、職場、買い物先など別々の場所にいることが多くあります。地震直後に全員が自宅へ戻ろうとすると、道路の混雑、火災、落下物、帰宅困難など別の危険に出会うことがあります。
まず、それぞれがいる場所で身の安全を確保します。学校や職場、商業施設では、その施設の放送と職員の指示を確認します。自宅へ急いで移動するかどうかは、揺れ、火災、津波、交通、日没、体調などを見て判断します。
連絡が取れないことを前提にする
大勢が一斉に電話をかけると、通話がつながりにくくなることがあります。短いメッセージ、災害用伝言ダイヤル171、web171、遠方の親族を介した連絡など、複数の方法を決めておくと役立ちます。
- 無事か、けがはないか
- 現在いる場所と、そこが安全か
- 移動する予定があるか
- 次に連絡を確認する時刻
- 電池を節約するため、伝える内容を短くまとめる
連絡がないことだけで、すぐに危険な場所へ探しに行くのは避けます。子どもの学校や保育施設には引き渡しルールがあります。家族が迎えに行けない場合の代理人や待機方針を、平時に確認してください。
徒歩で帰宅するかを慎重に決める
鉄道が止まっても、すぐに長距離を歩くことが安全とは限りません。余震、火災、道路の損傷、群衆、悪天候、体調不良があると、移動そのものが危険になります。勤務先や一時滞在施設で安全に待てるなら、交通・自治体情報を確認しながら待機する選択もあります。
移動する場合は、地図、飲料水、履物、ライト、季節の服装を確認し、危険箇所や立入禁止区域へ入らないようにします。普段から通勤・通学経路の途中にある広い場所、一時滞在施設、公衆電話などを調べておくと判断材料になります。
支援が必要な人と一緒にいる場合
乳幼児、高齢者、障害のある人、妊娠中の人、持病のある人は、同じ揺れでも必要な支援が異なります。まず自分の安全を確保し、声をかけて本人の希望と状態を確認します。無理に抱えたり移動させたりすると、双方がけがをするおそれがあります。
- 車いすや歩行補助具のブレーキと周囲の落下物を確認する
- 補聴器、眼鏡、薬、医療機器など必要品の場所を確認する
- 大きな音が苦手な人には、短く落ち着いた言葉で状況を伝える
- 階段移動が難しい場合の待機場所と支援方法を施設管理者へ確認する
- 見知らぬ人を支援するときは、先に声をかけ、勝手に体や器具を動かさない
医療機器の電源や薬が必要な場合は、早めに施設職員、自治体、医療機関などへ相談します。命に関わる症状があるときは119番を利用しますが、通信が混雑する可能性もあるため、周囲の人や防災センターへ助けを求める方法も確認します。
余震に備えながら情報を整理する
大きな揺れの後には余震が起こることがあります。最初の揺れで不安定になった家具、壁、ガラス、看板、斜面には近づきません。壊れた室内へ物を取りに戻る前に、建物の安全と避難情報を確認します。
SNSには早い情報が流れる一方、場所や時刻が違う映像、推測、古い情報が混ざることがあります。気象庁、自治体、消防、警察、施設管理者など発信元が明確な情報と照合してください。画面の切り抜きだけで判断せず、元の発表日時と対象地域を確認します。
情報を集め続けると電池を消費し、不安も強くなることがあります。安全が確保できたら、確認する時刻と情報源を絞り、必要な連絡を優先します。ラジオ、掲示板、館内放送など、スマートフォン以外の手段も使えるようにしておきましょう。
地震の直後は、周囲の人と声をかけ合うことも役立ちます。ただし、倒れた家具の持ち上げ、壊れた建物への立ち入り、火災現場での救助など、自分まで危険になる行動は避けます。助けが必要な人を見つけたら、場所、人数、けがの状態、周囲の危険を消防や施設職員へ伝えます。応急手当を行う場合も、まず現場の安全を確認し、可能なら119番の指示や救命講習で学んだ方法に従ってください。地域の訓練や救命講習に参加しておくと、消火器やAEDの位置、無理なく協力できる範囲を知る機会になります。
避難するときは、動きやすい服装とかかとが固定できる履物を選びます。夜間はライトで足元を確認し、切れた電線、ガラス、倒れた塀、冠水した道路へ近づきません。防災リュックを取りに戻ることで危険になる場合は、荷物より避難を優先します。
地震発生直後のよくある質問
緊急地震速報が鳴ったら外へ出るべきですか
すぐ外へ出るのではなく、周囲の状況に応じて身を守ります。屋外への経路に落下物やガラスがある場合があります。火災や倒壊など屋内に留まる方が危険な場合は、安全な方向への移動を優先します。
揺れている最中に火を消すべきですか
無理に火へ近づかないでください。気象庁は、家庭では無理に火を消そうとせず身の安全を確保するよう案内しています。揺れが収まり、安全にできる場合に火元を確認します。
玄関のドアはすぐに開けるべきですか
揺れの最中に玄関へ走ると、転倒や落下物によるけがの危険があります。まず身を守り、揺れが収まってから周囲を確認し、安全にできる場合に出口を確保します。
地震中にエレベーターへ乗っていたらどうしますか
設備の案内に従い、最寄りの停止階で降ります。閉じ込められた場合は非常ボタンやインターホンで連絡し、扉をこじ開けません。
車を置いて避難する場合、鍵はどうしますか
警察庁は、道路上へやむを得ず置く場合、キーを付けたままにするか車内の分かりやすい場所へ置き、ドアをロックしないよう案内しています。現場の警察官や道路管理者の指示を優先してください。
津波警報が出ていなくても避難すべき場合はありますか
海岸付近で強い揺れ、または弱くても長くゆっくりした揺れを感じた場合は、警報を待たず、海岸や河口から離れて高い場所などへ避難することが重要です。
家族と連絡が取れない場合はどうしますか
通話を繰り返すだけでなく、事前に決めた集合場所、災害用伝言ダイヤル171やweb171、通信事業者の伝言板などを利用します。利用条件は最新の公式案内を確認してください。
まとめ|地震直後は荷物より安全確認
緊急地震速報を見聞きしたときも、先に揺れを感じたときも、最初にすることは身の安全確保です。低い姿勢を取り、頭と首を守り、落下物や倒れそうな物から離れます。揺れの後は、けが、火、ガス臭、出口、津波などを一つずつ確認します。
地震の揺れが収まっても、停電、断水、通信障害など生活への影響が続くことがあります。次の第2部では、トイレ、食料、情報収集、在宅避難、避難所生活を詳しく確認します。
🛡 地震対策シリーズ【全3部】
地震への備えは、「発生直後の行動」「発生後72時間の対応」「日頃の備え」の3段階で考えることが大切です。
3記事を順番に読むことで、地震発生時に取るべき行動と、家族を守るための準備を体系的に確認できます。


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