
地震の揺れが収まった後も、生活上の困りごとは続きます。停電、断水、通信障害が同時に起こると、照明、トイレ、調理、情報収集、家族との連絡が難しくなります。
「72時間」は地震後の初期段階を考える検索上の目安であり、絶対的な生存期限ではありません。家庭備蓄は最低3日分、できれば1週間分程度が公的な目安ですが、地域、季節、家族構成、支援の状況によって必要量は変わります。
この記事では、自宅や避難所で生活を続けるために、停電、断水、トイレ、食料、通信、在宅避難の判断を順番に整理します。家具固定など地震前の対策は第3部、地震発生直後の行動は第1部で確認してください。
地震後に起こりやすい生活上の問題
- 停電で照明、冷暖房、調理、充電が使いにくくなる
- 断水で飲料水、調理、手洗い、トイレが制限される
- 通信障害や混雑で家族と連絡しにくくなる
- 排水管の損傷によってトイレを流せない場合がある
- 食料の入手や冷蔵保存が難しくなる
- ごみや使用済み携帯トイレの保管が必要になる
- 入浴、洗濯、歯みがきなど衛生を保ちにくくなる
- 真夏の暑さや真冬の寒さが健康へ影響する
- 避難所の混雑や、在宅避難の孤立が起こり得る
すべての家庭で同じ問題が同じ順番に起こるわけではありません。まず建物の安全、火災、津波、土砂災害、家族の健康を確認し、その後に生活上の問題を一つずつ整理します。
停電したときに最初に確認すること
ブレーカーや電気機器の安全確認
自宅だけの停電か周辺一帯の停電かを、安全に確認できる範囲で確かめます。倒れた家電、傷んだコード、水にぬれた機器、焦げたにおいがある場合は、むやみに触れません。電力会社や消防の案内を確認します。
停電中は、使用していた電気機器のスイッチを切り、可能であればプラグを抜きます。避難して自宅を離れる場合にブレーカーを落とす案内がありますが、暗闇で危険がある場合や医療機器を使っている場合などは、状況と設備を確認してください。
ライトは火を使わない物を優先する
懐中電灯、ヘッドライト、ランタンなど、火を使わない照明を優先します。ろうそくは余震で倒れたり、可燃物へ燃え移ったりする危険があります。ライトは一か所にまとめず、寝室、居間、防災バッグへ分散します。
冷蔵庫を開ける回数を減らす
停電後は冷気を逃がさないため、必要がない限り冷蔵庫や冷凍庫の扉を開ける回数を減らします。食品が安全に食べられる時間は、庫内温度、季節、停電前の状態、食品の種類で変わるため、一律の時間で断定できません。
異臭、変色、容器の膨張など異常がある食品は食べません。要冷蔵の薬がある場合は、製薬会社、薬剤師、医療機関へ保管方法を確認します。
季節ごとの暑さ・寒さ対策
暑い時期は水分と塩分、風通し、日差しを避ける場所を確保します。体調不良、意識の異常、強いだるさなどがあれば医療支援へつなげます。寒い時期は重ね着、帽子、毛布、床からの冷え対策を行い、燃焼器具による一酸化炭素中毒に注意します。
復電時の通電火災を防ぐための確認
通電火災とは、損傷した配線や、転倒した暖房機器などに電気が戻ったときに起こる火災です。復電前に機器の破損や周囲の可燃物を確認し、異常がある機器は使用しません。
再通電後も煙、異音、焦げたにおいがないか注意します。異常を感じた場合は、安全にできるならブレーカーを落とし、消防や電力会社へ連絡します。危険な場所へ戻って確認しないでください。
断水したときに困ること
飲料水
飲料水は一般的な目安として1人1日3リットルと案内されています。これは飲用と調理を想定した目安で、暑さ、体格、授乳、病気などにより必要量は変わります。保存水は一か所に集中させず、期限と容器の状態を確認します。
調理
断水時は、洗い物や加熱に多くの水を使う料理を避け、調理不要または少量の水で食べられる食品を組み合わせます。カセットこんろを使う場合は、説明書、換気、燃料の期限を確認し、車内やテント内など狭い場所で使いません。
手洗いと衛生
水が使える場合は石けんと流水を優先します。使えない場合は、手指消毒剤やウェットティッシュを補助的に使います。食事前、トイレ後、汚物処理後は特に手指衛生を意識し、皮膚トラブルや誤飲にも注意します。
トイレ
水道が止まっていても排水管が安全とは限りません。特に集合住宅では、上階から流した汚水が別の住戸であふれる可能性があります。自治体、管理会社、管理組合が使用可能と確認するまで、無理に流さない判断が必要です。
洗濯と入浴
入浴や洗濯を無理に続けるより、体を拭く、下着を交換する、汚れた衣類を袋で分けるなど、水を節約する方法を使います。感染症、傷、皮膚症状がある場合は、避難所の保健師や医療職へ相談します。
災害時のトイレ問題
トイレを我慢すると、水分を控えて体調を崩すことがあります。断水や排水管損傷を想定し、水洗トイレへ取り付ける携帯トイレを平時から準備し、実際の使い方を確認しておきます。
携帯トイレと簡易トイレの違い
携帯トイレは、便器などへ袋を取り付け、排せつ物を凝固剤や吸収材で処理する製品です。簡易トイレは、便座や組み立て式の本体を含む物を指すことがあります。名称は商品によって異なるため、内容物を確認します。
必要回数を家族で計算する
使用回数には個人差があります。家族人数と想定日数だけでなく、子ども、高齢者、妊娠中の人、持病のある人を考え、余裕を持たせます。凝固剤、便袋、消臭袋、手袋、手指衛生用品をセットで保管します。
使用済み袋を安全に保管する
使用済み袋は製品説明に従って密閉し、子どもやペットが触れず、生活空間や食品から離れた場所に一時保管します。廃棄方法は自治体によって異なるため、災害時の最新案内に従います。
非常食と保存水は何日分必要か
最低3日分を一つの目安として考える
内閣府は、各家庭で最低3日分、できれば1週間分程度の飲料水と食料などを備えるよう案内しています。3日分は十分を保証する量ではなく、最初に目指す目安です。
大規模災害では1週間以上も検討する
道路や物流の被害が広い場合、支援や買い物の再開まで時間がかかることがあります。保管場所と予算を考えながら、普段使う食品を少しずつ増やし、1週間以上も検討します。
家族構成に合わせる
必要量は、人数だけでなく、年齢、食事量、季節、健康状態で変わります。家族が実際に食べられる食品を選び、同じ食品へ偏らないようにします。
常用薬・乳幼児・高齢者・アレルギーへの対応
常用薬、乳児用ミルク、離乳食、介護食、アレルギー対応食は代用品を見つけにくいため、早めに準備します。薬は自己判断で他人と分けず、処方や備蓄について医師や薬剤師へ相談します。
調理不要の食品も入れる
停電や断水で加熱できない場合に備え、開封してすぐ食べられる食品も組み合わせます。缶切りが必要か、食器や水が必要かを実際に確かめます。
ローリングストックを活用する
ローリングストックは、普段使う食品を少し多めに持ち、古い物から使い、使った分を補充する方法です。期限だけでなく、保管温度、包装の破損、家族の好みも定期的に確認します。
正しい情報を得る方法
自治体、気象庁、消防、警察、電力・水道事業者、施設管理者などの公式情報を優先します。テレビ、携帯ラジオ、防災行政無線、避難所の掲示板など、スマートフォン以外の情報源も持ちます。
SNS情報は、発信元、発表日時、対象地域、現在も有効かを確認します。古い給水情報や別地域の避難情報を善意で広めると混乱につながるため、未確認情報を断定して拡散しません。
災害用伝言サービスを平時に試す
災害用伝言ダイヤル171やweb171は、通信が集中したときの安否確認に使えるサービスです。提供条件や登録できる番号などは状況により設定されるため、通信事業者の最新案内を確認し、体験利用日などに家族で試します。
スマートフォンの電池を長持ちさせる方法
- 画面の明るさを下げ、画面の点灯時間を短くする
- 使わないアプリや位置情報などを、必要性を確認して停止する
- 省電力モードを使う
- 圏外で接続を探し続ける状態では、必要に応じて通信設定を見直す
- 通話が混雑するときは短いメッセージや伝言サービスを使う
- 家族で連絡する時間と手段を決める
- 端子と出力が合う予備電源、ケーブルを用意する
通信設定を切り替えると、緊急情報を受け取れなくなる場合があります。必要な通知を残し、状況に合わせて調整してください。
モバイルバッテリーは高温、衝撃、水ぬれ、膨張などに注意し、製品の保管条件と回収方法を確認します。乾電池や自動車バッテリーを使った危険な自作充電は行いません。
家族と連絡が取れない場合
通話を繰り返すだけでなく、災害用伝言サービス、短いメッセージ、遠方の親族を中継役にする方法を使います。家族で、第一集合場所、そこが危険な場合の予備場所、連絡を確認する時間を決めます。
子どもの学校、勤務先、福祉施設の引き渡しルールも平時に確認します。スマートフォンが使えない場合に備え、家族、学校、勤務先、遠方の連絡先を紙にも残します。
避難所へ行くか在宅避難か
避難所と在宅避難のどちらが適切かは、自宅の安全性と周囲の災害リスクで変わります。自宅に倒壊、火災、津波、土砂災害などの危険がある場合は、避難情報や現場の状況に従い安全な場所へ移動します。
自宅に留まれない、自治体から避難情報が出ている、医療や生活支援が必要、建物管理者から退去案内がある場合など。
自宅と周囲の安全を確認でき、生活を続ける備蓄と衛生環境があり、自治体や管理者が在宅を制限していない場合など。
- 自宅の耐震性や損傷
- 火災、津波、土砂災害、液状化などの周辺リスク
- 電気、水道、ガス、トイレが使えるか
- 家族のけが、持病、障害、妊娠、乳幼児の有無
- 自治体の避難情報と避難所の開設状況
- マンション管理者や施設管理者の案内
- ペット同行や同伴のルール
- 在宅避難者への物資配布や情報提供の場所
避難所へ行けば必ず安全、自宅にいれば安心とは限りません。時間の経過や余震で状況が変わるため、継続して再確認します。
避難所生活で確認したいこと
- 受付方法と居住スペース
- トイレの場所、利用ルール、手指衛生
- 食事と飲料水の配布、アレルギー表示
- 常用薬、持病、医療機器についての相談先
- 換気、清掃、ごみ、感染症対策
- 睡眠と休息を取りやすい場所
- 女性、子ども、高齢者、障害のある人の安全と配慮
- 更衣、授乳、トイレなどプライバシー
- ペット同行・同伴避難のルール
- 貴重品と防犯
- 情報掲示板と物資配布の案内
- 発熱、下痢、強い不安など体調不良時の相談先
不足や体調不良を黙って我慢せず、避難所運営者、保健師、医療職へ早めに伝えます。他人の薬や食事を独断で分配せず、専門の担当者へつなげます。
地震後の生活で役立つ防災用品
断水時に備える携帯トイレ
乾電池でも使える携帯ラジオ
スマートフォン用モバイルバッテリー
調理不要または簡単に食べられる非常食セット
衛生と健康を守るための工夫
断水中は、手洗い、歯みがき、入浴、洗濯が普段どおりにできません。限られた水は飲用と調理を優先し、ウェットティッシュ、手指衛生用品、歯みがきシート、体拭き用品などを組み合わせます。製品の使用対象と注意事項を確認し、乳幼児や肌が弱い人には合う物を選びます。
ごみや使用済み携帯トイレは、においと衛生の問題につながります。袋を二重にするなど製品の説明に従って密閉し、自治体が案内する回収方法まで家庭内で保管します。勝手に下水や屋外へ捨てないでください。
体調の変化を見逃さない
避難生活では、水分を控えすぎる、同じ姿勢が続く、睡眠不足になるなどの変化が起こります。持病、発熱、胸の痛み、息苦しさ、強い脱力などがある場合は我慢せず、医療救護所、避難所運営者、自治体の相談窓口へ伝えます。
- のどが渇く前に少しずつ水分を取る
- 安全な範囲で足首を動かし、長時間同じ姿勢を避ける
- 常用薬の残量と処方内容を紙でも確認できるようにする
- 食物アレルギーや医療上の配慮を早めに伝える
- 感染症の流行状況に応じ、換気や距離、マスクを検討する
これらは一般的な備えです。症状や持病に関する判断は、医師、薬剤師、保健師など専門職の案内を優先してください。
真夏・真冬・悪天候の避難生活
同じ停電でも、真夏と真冬では危険が異なります。夏は室温と湿度、熱中症の兆候を確認し、日差しを避け、利用できる冷房施設や給水場所の情報を探します。車内や閉め切った部屋では温度が上がりやすく、子ども、高齢者、持病のある人は特に注意が必要です。
冬は衣類を重ね、床からの冷えを段ボールやマットで減らし、濡れた衣類を早めに替えます。カセットコンロや暖房器具を閉め切った空間で使うと、一酸化炭素中毒や火災の危険があります。換気と製品の使用条件を守り、就寝中の使用は説明書に従います。
大雨や強風が重なる場合は、地震で傷んだ斜面、屋根、窓、外壁に近づきません。避難経路が安全かを自治体情報と現地状況で確認し、暗くなってから危険な道を無理に進まないようにします。
子ども・高齢者・ペットの生活を支える
乳幼児と子ども
ミルク、離乳食、おむつ、着替え、母子健康手帳の控えなどは、普段使う物を少し多めに循環させます。液体ミルクなどを備える場合は、対象月齢、保存方法、容器の状態、使用期限を確認します。子どもには、怖い情報を繰り返すより、今いる場所が安全か、次に何をするかを短く伝えます。
高齢者・持病のある人
薬、補聴器の電池、眼鏡、入れ歯用品、介護食、排せつ用品などは個別性があります。お薬手帳や処方内容の写し、医療機器の電源計画、緊急連絡先をまとめます。避難所で支援が必要なことを伝えられるよう、本人の同意を得てメモを用意します。
ペット
同行避難は、ペットと一緒に危険な場所から逃げることであり、避難所の同じ居住空間で過ごせることを意味するとは限りません。ケージ、フード、水、薬、トイレ用品、写真、登録情報を準備し、自治体と避難所の受け入れ条件を確認します。
避難所へ入れない、または在宅避難を続けられない場合に備え、親族、知人、動物病院、民間施設など複数の預け先候補を検討します。災害時に初めてケージへ入れるのではなく、平時から短時間の練習をしておくと負担を減らせます。
支援を受けるために記録を残す
被害状況、家族の安否、使った備蓄、必要な薬などを紙へ簡潔に記録すると、相談や引き継ぎに役立ちます。スマートフォンで撮影できる場合も、電池切れや故障に備えて重要な内容は紙にも残します。
住宅の被害を撮影するときは、余震、ガラス、倒れた家具、ガス臭などの危険を先に確認します。危険な建物へ記録のために戻らないでください。罹災証明などの手続きは自治体の案内に従い、片付けや修理を急ぐ前に必要な記録を確認します。
地震後の生活に関するよくある質問
断水中にトイレの水を流してよいですか
無条件では流せません。排水管や下水道が損傷している場合があります。自治体、管理会社、管理組合が使用可能と確認するまで携帯トイレを使う判断が必要です。
冷蔵庫の食品はいつまで食べられますか
庫内温度、停電時間、季節、食品の種類で変わります。一律の時間では判断できません。扉を開ける回数を減らし、温度管理できなかった要冷蔵品や異常のある食品は食べないでください。
避難所へ必ず行く必要がありますか
自宅と周囲が安全で生活を続けられる場合は在宅避難も選択肢です。一方、倒壊、火災、津波、土砂災害などの危険があれば避難を優先します。自治体の情報を確認してください。
在宅避難でも支援物資を受け取れますか
地域によって配布方法や登録方法が異なります。自治体、指定避難所、地域の掲示板などで在宅避難者向けの情報を確認します。
スマートフォンがつながらない場合はどうしますか
通話を繰り返すだけでなく、メッセージ、171やweb171、携帯ラジオ、防災行政無線、避難所の掲示板を使います。
ペットと避難所へ行けますか
同行避難や同伴避難の扱いは自治体や避難所で異なります。ケージ、フード、薬、排せつ用品を準備し、地域のルールを事前に確認します。
備蓄は3日分と1週間分のどちらが必要ですか
最低3日分を最初の目安にし、できれば1週間分程度を検討します。家族構成、地域、保管場所、災害リスクに合わせて増やしてください。
まとめ|地震後は生活を続ける備えが必要
地震後は、建物と周囲の安全を確認したうえで、停電、断水、トイレ、食料、通信を一つずつ整えます。72時間だけを絶対的な期限にせず、最低3日分、できれば1週間分程度を目安に、家庭の条件へ合わせます。
地震後の生活を守るには、発生前に家の危険を減らし、備蓄と連絡方法を準備することが大切です。第3部では、家具固定、ガラス対策、ハザードマップ、家族会議、防災バッグ、ローリングストックを紹介します。
🛡 地震対策シリーズ【全3部】
地震への備えは、「発生直後の行動」「発生後72時間の対応」「日頃の備え」の3段階で考えることが大切です。
3記事を順番に読むことで、地震発生時に取るべき行動と、家族を守るための準備を体系的に確認できます。


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