はじめに
日本は地震、台風、豪雨など様々な自然災害に見舞われる国です。私自身も数々の災害を経験し、その度に「あれがあれば良かった」「これが役立った」という教訓を得てきました。本記事では、実際の経験に基づいた非常時に本当に役立つ備品リストと、その選び方のポイントを紹介します。単なる備品リストではなく、なぜそれが必要なのか、どのように役立つのかを具体的に解説します。
基本の防災セット:生命を守る最低限の備え
1. 水(1人1日3リットルを目安に最低3日分)
私が東日本大震災の際、給水所に並んだ経験から言えることは、水の確保が最優先事項だということです。断水は予想以上に長引くことがあります。ペットボトルでの備蓄に加え、浄水タブレットや携帯浄水器があると安心です。特に赤ちゃんや高齢者がいる家庭では、水の確保は最重要課題です。
2. 非常食(最低3日分、できれば1週間分)
災害時に重要なのはカロリー摂取と調理の手軽さです。アルファ米やレトルト食品は定番ですが、私の経験では「温めなくても食べられるもの」が重宝しました。缶詰(プルトップ式)、栄養バー、乾パンなどは必須です。また、普段から食べ慣れているものを含めておくと精神的な安定にもつながります。
3. 携帯ラジオ(できればソーラー充電または手回し充電式)
停電時、情報源として最も頼りになるのがラジオです。2018年の北海道胆振東部地震で道内全域が停電した際、スマートフォンの電池が切れた後もラジオだけが情報源でした。ソニーのICF-B99やパナソニックのRF-TJ20が災害時に実績があります。
4. 懐中電灯・ヘッドライト(予備電池も忘れずに)
夜間の避難や家の中での行動に必須です。特にヘッドライトは両手が使えるので、ブレーカーの確認や応急処置の際に役立ちます。私は2016年の熊本地震の際、LEDランタンと共にヘッドライトが非常に役立ちました。単三・単四電池は多めに用意しておきましょう。
5. 救急セット(常備薬も含む)
基本的な救急用品に加え、各家庭で必要な常備薬を備えておくことが重要です。私の場合、2019年の台風19号の際、近隣の薬局が数日間休業となり、家族の常備薬が切れそうになり焦りました。処方薬は少なくとも1週間分は余分に保管しておくことをお勧めします。
快適さを高める便利グッズ:経験者が選ぶ本当に役立つアイテム
1. モバイルバッテリー(大容量タイプ)
現代の災害において、通信手段の確保は生命線です。20,000mAh以上の大容量モバイルバッテリーがあれば、スマートフォンを数回充電できます。2016年の熊本地震では、避難所でモバイルバッテリーの貸し借りが活発に行われていました。Ankerの製品は信頼性が高くおすすめです。
2. 多機能ソーラーランタン
照明と充電機能を兼ね備えたソーラーランタンは、長期の停電に備える強い味方です。私は2019年の千葉県を襲った台風15号による長期停電の際、このタイプのランタンで部屋を明るくしながらスマートフォンを充電できました。ルーメナー7やジェントスのランタンが実用的です。
3. ポータブル調理器具(カセットコンロ・燃料)
電気・ガスが使えない状況で温かい食事を作れることは、精神的な支えになります。カセットコンロとガスボンベ(最低10本)は必須です。2018年の大阪北部地震では、ガスの復旧に2週間かかった地域もあり、カセットコンロが大活躍しました。イワタニのカセットフーは耐久性が高くおすすめです。
4. 簡易トイレ(防臭・固形剤タイプ)
水道が止まると最も困るのがトイレです。2016年の熊本地震では、トイレの問題が避難所生活の大きなストレスになりました。簡易トイレは防臭効果の高いものを選び、大人1人あたり最低20回分は準備しておくべきです。凝固剤と処理袋のセットタイプが使いやすいでしょう。
5. 防水シート・ブルーシート
意外と多用途に使えるのがブルーシートです。2019年の台風19号では、窓ガラスの飛散防止、雨漏りの応急処置、避難所でのプライバシー確保など様々な場面で活躍しました。3m×4m程度のサイズを2〜3枚用意しておくと便利です。
災害別に準備しておきたい特別アイテム
地震に備えて
- 家具転倒防止器具: 2011年の東日本大震災では、家具の下敷きになる被害が多発しました。L字金具や突っ張り棒を使って、背の高い家具は必ず固定しましょう。
- ヘルメットまたは防災頭巻: 就寝中の地震に備え、枕元に置いておくと安心です。私は軽量の防災ずきんを使っています。
- 耐震マット: テレビやパソコンなど、落下すると危険な家電製品の下に敷いておくと効果的です。
水害に備えて
- 土嚢袋または簡易水防袋: 2018年の西日本豪雨では、準備していた水防袋で玄関からの浸水を最小限に抑えることができました。空の状態で保管でき、使用時に水を入れるタイプが収納に便利です。
- ウェーダー(胴付き長靴): 浸水時の移動に役立ちます。2019年の台風19号では、近所の方がウェーダーを着用して高齢者の救助に当たっていました。
- 防水バッグ: 貴重品や書類を守るために必須です。ジップロックの大型タイプでも代用可能です。
台風・強風に備えて
- 養生テープ・ガムテープ: 窓ガラスの飛散防止や、割れた窓の応急処置に使用します。2018年の台風21号では、これで応急処置をした家が多くありました。
- 非常用ロープ(10m以上): 物の固定や、最悪の場合の脱出用として役立ちます。パラコードタイプは強度が高くコンパクトです。
- 防風・防雨カッパ(上下セパレートタイプ): 避難時や屋外での作業時に必須です。安価なビニール製ではなく、耐久性のあるナイロン製がおすすめです。
備蓄のポイント:実践的アドバイス
1. ローリングストック法の活用
非常食は「買って置いておくだけ」では期限切れのリスクがあります。私は「ローリングストック法」を取り入れています。普段から食べられる非常食(レトルトカレーなど)を多めに購入し、古いものから使い、使った分を補充する方法です。こうすることで、常に新しい非常食を備蓄できます。
2. 季節ごとの見直し
夏と冬では必要な備品が異なります。私は年に2回、季節の変わり目に防災グッズを見直しています。夏には保冷剤、虫除け、うちわなどを、冬には使い捨てカイロ、防寒シート、厚手の靴下などを追加しています。2018年の北海道胆振東部地震では、9月だったにもかかわらず夜は冷え込み、防寒対策の重要性を痛感しました。
3. 家族構成に合わせた備え
乳幼児、高齢者、ペットがいる家庭では、それぞれに必要な備品が異なります。私の知人は、離乳食やおむつの備蓄に加え、子どものお気に入りのおもちゃも非常袋に入れていました。これは2016年の熊本地震の避難所生活で、子どもの精神的安定に役立ったそうです。
4. 分散保管の重要性
すべての備蓄品を一か所に置いておくのはリスクがあります。私は主な備蓄品は玄関近くの収納に、別セットを寝室に、さらに小型の非常袋を車のトランクに保管しています。2018年の大阪北部地震では、家に戻れない状況が発生し、車に常備していた備品が役立ちました。
まとめ:備えあれば憂いなし
災害はいつ、どこで発生するか予測できません。しかし、適切な備えがあれば、その影響を最小限に抑えることができます。この記事で紹介した備品は、実際の災害経験から本当に役立ったものばかりです。すべてを一度に揃える必要はありません。少しずつでも、着実に備えを進めていきましょう。
最後に、物理的な備えと同じくらい重要なのが、家族との防災計画の共有です。避難場所や連絡方法を事前に話し合い、定期的に防災訓練を行うことで、いざというときの行動がスムーズになります。
「備えあれば憂いなし」—この言葉の重みを、災害大国日本に住む私たちは肝に銘じておくべきでしょう。
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